平成二十四年一月号
本年も宜しくお願い申し上げます

1. 街なみ環境整備事業のご報告

国土交通省の補助金を受けて、平成16年度から10年の期間内で同事業を進めていることは、皆様方ご承知と存じます。この度、15件目として青木邸が、美装化にご協力頂けることになりました。青木稔享家(富小路上ル福長町110)は、昭和5年竣工・築80年の、繊細な作りの京町家。その独特な美しさが、随所に見受けられます。当初の詳細な設計図が現存しており、応接間の暖炉や壁面、ステンドグラスやソファーのデザインには、和洋折衷を取入れようとした建築家の、おしゃれなコンセプトが感じられます。

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▲ 青木邸のガレージ部分

今回は事業の性質上、外観部の美装化に目的を絞り、出来る限り当初の装いに戻そうと考えています。自動車の出入りの利便性から、車庫として利用している現在の空間を、当初の姿に戻そうとするもので、一階前面の7枚の多層スライド格子扉を撤去し、富小路通りに多く見られる「真壁」に復元し、オリジナルな美しさの再現が試みられます。皆様、是非ご注目下さいませ。

2. 姉小路界隈で守られてきた、防災文化遺産の発掘調査を始めます

「姉小路界隈の安心・安全まちづくり」の一環で、耐震・防火調査をした町家から、第2次世界大戦中の防火改修資料が発見されました。戦火による建物の延焼を防ぐ為に、京都市が開戦直前の昭和14年6月から始めた「木造建物の防火改修補助事業」に関する資料で、木造建物の外壁・軒裏・外部開口部・塀等の防火改修や、「ウダツの新設」が補助対象になっています。

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▲ ウダツのある町家

上記資料が発見された姉菊屋町の近隣だけでも、42軒が市の補助事業で防火改修をし、そのうち、4軒の町家の現存が確認されています。このことから、当時都心では、数多くの町家が同事業で防火改修をしたと考えられます。「当時の資料と防火改修事例の両方が現存している、わが国でも他に例を見ない貴重な防災文化遺産が、約70年に亘って受け継がれてきた姉小路界隈」といえます。今後も、専門家の協力を仰いで引続き調査を行いますので、ご協力、宜しくお願い申し上げます。

3.地区計画制度実現にむけての、進捗ご報告

昨年度末より、姉小路界隈を考える会が発起人となり立ち上げた「姉小路界隈まちづくり協議会」が主体となり、「地区計画制度」の導入を進めています。姉小路通を軸に、東西は寺町通から烏丸通まで、南北は御池通から三条通までの区域において、落ち着いた町並みと京都らしい品格を維持する為の方針として、

  1. 静かで落ち着いた住環境を守る。
  2. お互いに協力しながら、暮らしと文化を継承する。
  3. 気遣いと配慮を共有し、安全に安心して住み続けられる環境を守る。

を、地区計画(素案)の目標に掲げています。

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▲ 地区計画制度検討の定期会合の様子

このような姉小路界隈の特性を守る為、既に一部地区では平成11年7月より建築協定を締結し、風俗店等を規制しています。しかし、建築協定地区外では、木屋町通等の賑わいの外延化や商業施設立地の活発化などにより、アダルトショップやゲームセンター等、姉小路界隈にふさわしくない風俗店の進出が懸念されることから、地区計画(素案)では、風俗店等の規制を盛り込んでいます。

この度、地区計画(素案)に関するアンケート(223戸に配布)を実施し、そのうち62戸から回答をいただきましたので、その中間結果をご報告しながら12月の定期会合を開催し、貴重なご意見を多数いただきました。今回から、(財)京都市景観まちづくりセンターも加わり、次回以降、まちづくりビジョンについて議論を行いたいと考えております。

姉小路界隈まちづくり協議会による、この「地区計画制度」実現への取組は、京都市都心部の柳池・初音両元学区にまたがる初事例として、周囲の隣接地域や各方面からも注目されています。新年を迎えまして、新たな気持ちで取組んでいかねばと思っております。また、12ブロック各ご町内から会合にご参加戴き、大きな関心を示していただいている世話役様のお骨折りには、誠に感謝致します。次回は1月17日(毎月第三火曜日19時より:、中京酒販売組合の1階会議室)において、月例定期会合です。では、本年も宜しくお願い申し上げます。

(事務局長:谷口親平)