京の街角 姉小路界隈ヨリ 29号

京都市交通政策監 水田雅博氏 近影

巻頭言

歩くまち・京都 姉小路界隈に見た … ほんまもの

京都市交通政策監 水田 雅博 

たそがれ時、行灯の灯りに浮かび上がる姉小路界隈に、懐かしい心が和む温もりを感じました。「姉小路界隈を考える会」の皆様方には、門川京都市政の推進にお力添えを賜り、心から御礼を申し上げます。

姉小路界隈は、門川市長が、幼い頃から慣れ親しんだ地であります。それだけに地域を愛し、地域力を駆使し、熱意溢れる活動を展開しておられます皆様のお姿は、京都市政にも大変心強いものでございます。

さて、京都のまちには、美しい自然や社寺、京町家等の歴史を想わせる建物や風情溢れる景観が息づいています。まちなかの交差点からも、東山・西山・北山の三山を眺めることができるこの京都のまちを守り、築いてこられた先人に感謝の念を抱かずにはおられません。

明治二十八年に我が国で初めての路面電車が走って以来、私達の身近な移動手段として慣れ親しまれた市電でさえクルマ社会の進展により、「道」から消えてしまいました。本来、まちの賑わいの拠点であるはずの「道」をクルマが我が物顔で走るようになり、京都の魅力ある自然は、地球温暖化などの問題とともに危機的な状況となっております。

こうした中、京都議定書誕生の地、環境モデル都市でもある京都市は、本年一月、クルマ中心の社会から「歩く」ことを重視したまちと暮らしへの転換を基本理念とし、自動車利用の制限も含めた様々な抑制策等を通じて、快適、便利に移動できる道路空間、公共交通の利便性向上などを推進する「歩くまち・京都」総合交通戦略を策定し、歩く魅力に溢れ、一人ひとりが歩くライフスタイルを大切にする「歩くまち・京都」憲章を制定しました。これにより、京都の魅力を守り、「歩いて楽しいまち」を実現するためのメニューは揃いましたが、これからが、正念場です。

自動車利用の制限も含めた抑制策、快適な歩行空間の整備、公共交通ネットワークによる利便性向上、駐車場施策の見直し、観光地交通対策、分かりやすい案内標識の充実なども交通まちづくり政策として推進しなければなりません。そして、何よりも「打ち水」や「門掃き」などの文化が息づく、美しい「まちなか」の道が、通過交通に邪魔されることなく、行きかう人々で賑わいを取り戻すことです。

確かにクルマは、便利です。市民の皆様のライフスタイルを変革するには、行政も相当な胆力が求められますが、行政の力は、僅かです。

しかしながら、京都のまちには、古くは祇園祭や幕末の争乱、そして、明治維新等々その時々に「町衆」の力の発揮によってかたち創られ、支えられてきた歴史、自治の伝統があります。その伝統を脈々と受け継いでおられますのが、まさに「姉小路界隈を考える会」の皆様です。 町並み保存や環境整備、地元中京もえぎ幼稚園、京都御池中学校との協働イベントや、大学生とのコラボレーションなど、目白押しに展開される味わい深い活動の数々に京都らしい「ほんまもの」の自治の姿を肌で感じております。

「歩いて楽しいまちづくり」を京都から世界に発信するため、京都市は、「お役所仕事」をするわけには参りません。

「姉小路界隈を考える会」の皆様の「ほんまもの」の活動との連携を図り、絆を大切にする「歩くまち京都推進室」でなければなりません。

課題は山積していますが、私自身が、越えられないハードルがあれば、蹴飛ばしてでも「歩くまち・京都」を前に進める決意です。

皆様方の「ほんまもの」のご活躍に対し、心から感謝申し上げますとともに、今後ますます結束を深められますことをご祈念申し上げます。